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2022年12月15日(木)白砂川発電所跡

  • 奈良で最初の水力発電所は下狭川町の白砂川南岸に建設されました。

  • (2024年2月28日(水) 午前0時46分8秒 更新)
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白砂川発電所跡

道の対岸に石垣で護岸されている場所があります。そこが白砂川発電所跡です。

奈良で最初の水力発電所

「狭川・歴史マップ」(狭川地区万年青年クラブ連合会・狭川地区自治連合会・狭川地区社会福祉協議会、平成30年(2018年)11月)に、「明治41年(1908年)明治天皇行幸の時、ここから送電されて奈良に初めて電灯が灯った。狭川村に灯ったのは45年(1912年)」と書かれています。しかしこの説明は史実とは少し異なっています。

実際には、明治27年(1894年)に、既に奈良電灯株式会社が現在の奈良市内に設立されており、設立当初で170戸、10燭光300灯とわずかではあるものの、火力発電による電気を現在の奈良市内の一部に供給していました。ところが火力発電に必要な石炭が、日清戦争の影響を受けて値上がりし続けため、事業が伸び悩みます。そこへ明治38年(1905年)、水力発電を計画する関西水力電気株式会社が設立され、設立と同時に同社は、競合する奈良電灯の事業を譲り受けることとなりました。事業を譲渡した時点で、奈良電灯の需要戸数は250戸、供給灯数700灯という程度で、設立当初からそれほど増えていませんでした。(『東邦電力史』東邦電力史刊行会、1962年、3〜4頁

白砂川発電所は、関西水力電気の第一発電所として、明治40年(1907年)9月、現在の奈良市下狭川町の、寺坂橋の下流200mほどの白砂川南岸に建設されました。車道(県道33号線)から見える対岸の石垣がその跡地です。白砂川を2.5kmほど遡った奈良市阪原町内に発電用水の取水堰がありました。取水された水は、尾根をトンネルでくぐり、谷を水路で渡って、最後には約50mの標高差がある、車道の向かい側の尾根の上から断崖を真っ逆さまに落ち、出力200kWの発電機を回していました。

関西水力電気は、白砂川発電所が完成するとすぐに、それまでの火力発電所を廃止して、奈良市と郡山町(大和郡山市)に水力発電による電灯を灯し、それと同時に点灯料金を大幅に値下げしました。その結果需要が急激に増加します。加えて、翌年の明治41年(1908年)秋に明治天皇を迎えての特別大演習を奈良で挙行するにあたり、電灯設備が多数必要となる旨、その筋より内命があったといいます。そこで同社は第二発電所となる布目川発電所(出力300kW)の建設を急ぎ、布目川発電所は早くも明治41年(1908年)11月に完成しました。(参考:山下孝二編『大和大観』大正4(1915)、33〜35頁

明治天皇を迎えての特別大演習に合わせ完成を急いだのは、白砂川発電所ではなく、木津川と布目川の合流点付近に現在もある布目川発電所の方だったようです。

白砂川発電所はその後、1922年(大正11年)ごろに、約800m下流に移設されて、出力が480kWに増強されます(『電気事業要覧』第13回、逓信協会、1922年、148頁)が、1967年(昭和42年)1月に廃止されました(『関西地方電気事業百年史』関西地方電気事業百年史編纂委員会、1987年、944頁)。ちなみに、白砂川発電所の移設先は、現在鉄工所となっています。

こちらの記事によると、鉄工所の方に思い切って声をかけてみたところ、「知ってるで!ここの地下に発電所があったんや!出口は見えるで」ということで、親切な鉄工所の方に放水路跡を見せてもらえたそうです。

一方、明治時代に建設された導水路の一部と取水堰は、奈良市の水道用水を須川ダムに集める水路に組み込まれ、必要に応じ回収されながら現在も使われ続けています。

「大和大観」に見る白砂川発電所

山下孝二 編「大和大観」大正4(1915)の34頁にある写真帖に、白砂川発電所らしき写真が掲載されています。石垣の雰囲気などは現地とそっくりです。

山下孝二 編「大和大観」大正4(1915)、p34・写真帖

奈良県立図書情報館所蔵、山下孝二 編「大和大観」大正4(1915)、p34・写真帖より往時の白砂川発電所。

わかりにくいですが、下写真の中央付近に、上写真の放水口らしき溝があります。

白砂川発電所跡放水口付近。

白砂川発電所跡放水口付近。

Map.

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