2014年4月25日(金)京都国立博物館「南山城の古寺巡礼」
京都国立博物館本館「明治古都館」とロダンの考える人。ふーむ…。
年間パスポート
京都国立博物館や奈良国立博物館が発行している年間パスポートを購入すると、京都、奈良の他、東京、九州の国立博物館で開催される特別展が、各展覧会につき1回、合計6回まで無料となります(うち東京・九州はあわせて二回まで)。また、各博物館の平常展が何回でも無料になるほか、パスポートを見せると近隣の美術・博物館の観覧料が団体料金になるなど、さまざまな特典があります。
ということで、京都と奈良、どちらの博物館で年間パスポートを買うか悩んだんですが、今回は京都国立博物館でパスポートを購入することにしました。京都国立博物館の年間パスポートには、同館入口手前のミュージアムショップで、図録やグッズの一部が一割引になる特典があるとのこと。ただしこの特典は、博物館の外にあるミュージアムショップでのみ有効で、特別展にあわせて設置された、館内の関連グッズ売り場では割引が効かないようです。
館内で売られている特別展にあわせて作られたグッズが割引対象とならないのはちょっと残念ですが、京都国立博物館のミュージアムショップには和物のいいグッズが多いので、一部とは言え割引があるのはうれしいです。なお、展覧会の図録ついては、京都国立博物館が発行するもののみが対象となっており、他の博物館発行のものや、京都国立博物館開催の展覧会でも、新聞社などと共催になっている場合、割引にならないそうです。「南山城の古寺巡礼」は新聞社との共催でしたので、外のミュージアムショップでも一割引にはなりませんでした。
京都国立博物館の次の企画は「修理完成記念 国宝鳥獣戯画と高山寺」ということで、全巻一挙公開となるそうです。奈良国立博物館でも毎年恒例の「正倉院展」など、興味深い展覧会が次々開かれます。特別展は1,200〜1,500円ぐらいしますから、三つ行けば余裕で元が取れる計算です。京都国立博物館の年間パスポートには、春秋の特別拝観で拝観料が一部割引になる特典もあるそうです。年間パスポート、なかなかいいですね!
年間パスポートをゲット! これで今年一年博物館に気軽に行けます☆ 六つスタンプ欄があって、中の受付で一回ずつ押してもらいます。
地元人こそおもしろい展覧会
「南山城の古寺巡礼」展、当初、近所のお寺の仏像をわざわざ見に行く意味あるかなあと思っていたんですが、行ってみたら想像以上におもしろかったです。
椿井大塚山古墳出土の三角縁神獣鏡。まさにこの古墳の真横を通って京都国立博物館までやってきました。出土した三角縁神獣鏡を見たのは初めてです!
2009年に発掘されニュースにもなった(asahi.com(朝日新聞社):「神雄寺」誰が何のために造営? 京都・馬場南遺跡の謎)馬場南遺跡(神雄寺跡)の出土品。このあたりもよく自転車で通ります。なんでもない近所のため池の見知った風景が写真パネルになっているのはなんだか変なかんじがしました。三彩陶器や万葉歌の書かれた8世紀の木簡まで出土していたんですね。へええ。
めったとお目にかかれない仏様がたくさん!
お寺ではなかなかお目にかかれない仏様や寺宝がたくさん来ていました。入れ替えがあるものもあるので、事前に展示期間を確認した方がいいと思います。逆に、みなさんこちらに出払っていて、お寺がご本尊を残しほぼからっぽ、ということもあるかもしれません。お寺の方を巡礼される際には、どうぞご注意を(^^;。
海住山寺に伝わる江戸時代に描かれた貞慶上人像。興福寺にある16世紀の像を写したものだそうです。貞慶上人が没したのは1213年ですから、元の絵が本人の特徴をとらえたものかどうかわからないですが、貞慶上人はたれ目でおちょぼ口だったんでしょうか。
海住山寺木造四天王像。ふだんは奈良国立博物館に収蔵されており、お寺でもめったと見ることができません。小さいながら迫力があり、精緻な造形に目を見張ります。最近作られたフィギュアかと思うほど色鮮やかなのにも驚かされます。この四天王像は、かつて東大寺大仏殿にあった巨大四天王像との類似が指摘されています。「BSジャパン 遥かなる運慶の極彩空間~今甦る東大寺大仏殿 幻の巨大仏像~」などテレビ番組でも取り上げられていました。この四天王像をよりどころに、大仏様並みに大きく、ケバケバしいほどに色鮮やかな四天王像が、東大寺大仏殿の四隅に立って、四方に睨みを利かせている、そんなようすを想像するのも楽しいです。本展覧会の見どころのひとつだと思います。
こちらもお目にかかるのがむずかしい現光寺の十一面観音坐像。観音様は人々を救って歩く菩薩ということで、立像であることが多いようですが、この十一面観音様は補陀落山に坐すお姿を象徴してか、坐像となっています。坐像は全国的にも珍しく、数体しかないのだとか。ただ、現光寺で拝観するには、10人以上の拝観希望者を集めて前日までに予約しなければならないので、個人ではなかなかお会いできません。一人でも5,000円納めれば開けてくれる、かもしれませんが…。
常念寺仏涅槃図。常念寺にこんなに立派な涅槃図があるとは知りませんでした。慟哭し転げ回る象や獅子、哀しみに暮れる釈迦の弟子たちが、のびのびした線で表情豊かに描かれています。元は灯明寺にあったものだそうです。灯明寺は廃仏毀釈で立ち行かなくなり、大正時代に三重塔が売り払われ横浜 三溪園に移築されました。残った本堂も昭和22年の台風で大破し解体保管された後、昭和62年に同じく三渓園に移築されたそうです。地元に近い人間としては複雑な気持ちになりますが、灯明寺跡にある御霊神社の関係者の方が、あのまま移築されなかったら崩れて朽ち果てただけだったかもしれない、というようなことをおっしゃっていたと聞きました。
浄瑠璃寺の多聞天立像(国宝)と薬師如来坐像。薬師如来坐像は5/13から6/1までの公開となっています。浄瑠璃寺では毎月8日、薬師如来の縁日に、三重塔を開扉しています。そのとき三重塔にいらっしゃる薬師様を拝むことができるのですが、なにせ三重塔の中は暗いので、ほとんど何も見えません。明るい所でお姿を見られるのは、めったとない機会だと思います。
浄瑠璃寺大日如来坐像。ふだんは非公開となっており、浄瑠璃寺本堂右手、池の北側、山門近くにあるお堂「潅頂堂」にいらっしゃいます。1月8日から10日の3日間のみ公開されています。最近まで近世修理の泥下地に覆われ当初の像容を損なっていたそうですが、2006年に修復され、今のお姿に戻されたようです。
他にもみどころたっぷりで、あっという間に時間が経ちました。ご近所以外の仏様ではやはり、ガイド音声の中島朋子さんと同じく、寿宝寺の千手観音様に圧倒されました。本当に千本の手をくっつけてしまうのがすごいです。正直なところを言えば、国宝級が集まる展覧会と比べると造形に素朴さを感じる仏様が多いですが、この地域の長い歴史や豊かな文化、京都・奈良との深いつながりを実感することができる、満足度の高い展覧会でした。
図録は地元文化財の資料集としてもオススメ!
本展覧会の図録は、出品されていない本尊の写真などもあり、地元の文化財や歴史の資料集として見ても、内容が充実していました。このページの写真は図録からの引用です。これだけ内容が詰まった本や写真集はなかなかないと思います。
表紙は笠置寺縁起絵巻。天人の力を借りて弥勒磨崖仏を描いているシーン。絵がかわいいです。描かれている弥勒像は悟りを開いた後の如来形ではなく、装飾品がハデな菩薩形で描かれていて、この絵が描かれた頃にはもう、弥勒磨崖仏の姿が失われていたと考えられるそうです。後醍醐天皇が笠置山にこもって戦った1331年に笠置寺が焼け落ちたあと、1482年に寺が再興されたころ描かれたものとみられるのだとか。
鎌倉時代に描かれた絹本著色笠置曼荼羅図などには、実物をかなり正確に写し取ったとされる弥勒磨崖仏が描かれています。笠置寺の弥勒磨崖仏を模していると言われる、当尾弥勒の辻の弥勒磨崖仏ともよく似ています。笠置寺縁起絵巻を描いた絵師は、これら鎌倉時代の絵や磨崖仏を見る機会もなかったようです。当時笠置寺はすっかり荒廃し忘れ去られた存在だったのでしょう。
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