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2019年6月7日(金)雨の浄瑠璃寺・行者まつり

  • 今年の行者まつりは雨でした。

  • (2019年6月9日(日) 午後0時46分15秒 更新)
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雨の浄瑠璃寺

阿弥陀如来像修理でわかってきたこと

今年の講演では、浄瑠璃寺阿弥陀如来坐像の修理に関わってきた、元木津川市文化財保護課の芝野さんが、修理でわかってきたことや、搬出の裏話など、修理の最新情報をお話しくださいました。

阿弥陀如来脇仏の搬出では、予想以上に台座が重く、現場でもそのことが話題になっていたそうです。のちの修理過程で、明治の修理で補強材がたくさん入れられていたため重くなっていたとわかりましたが、今回の修理でもさらに補強材が追加され、最終的に台座一つで200Kgを超える重さになったといいます。台座の重量が増えたことは、浄瑠璃寺本堂の床板を傷める原因ともなっており、現在ひび割れなどが目立つ状態とのことでした。このため須弥壇内の床板の補強も、今後予定されているようです。台座は虫食いやネズミによる破損が多く、補強材なしには仏像を支えられない状態だそうです。

また仏像台座共に漆箔の剥がれが目立ったため、搬出の際にははがれ落ちないよう処理をした上で、周りに落ちている埃も全て回収して、そこに混じった箔についても可能な限り元の位置に貼り付けたとのことです。

今回修理されたのは、本堂に向かって右(北)から数えて2番目と8番目(左端)の脇仏ですが、このうち第8脇仏の方は以前から、体躯が薄いことなど作風の違いが指摘されていました。今回の修理でも、第8脇仏造立には、他の脇仏にはない特殊な事情がありそうなことが見えてきたといいます。

第8脇仏の底面には虫食い穴が多数見つかっています。これは搬出時から現場では奇妙な虫食い穴だと言われていたそうですが、調べてみるともともと虫食いのある材を使って、この像が造られた可能性が高いとわかったとのこと。どうしてもその材を使わなければならない事情があったのかもしれません。

また第8脇仏の光背も独特で、他の脇仏の光背が草花をモチーフとした文様となっているのに対し、第8脇仏の光背のみ、猛禽類をモチーフとした文様が彫られており、阿弥陀仏には似つかわしくないとも思える猛々しいイメージです。脇仏の光背は中心の円相光背のみ当初のもので、それ以外の部分は南北朝ごろの後補と見られますが、光背が補われた頃にはまだ第8脇仏の特異な事情が意識されていて、意図的にこのような文様としたのではないか、とも思いました。

浄瑠璃寺第8脇仏(南1)。淡交社「古寺巡礼 京都7 浄瑠璃寺」p.29より。文様として描かれた鳥の羽根や鉤爪が見えます。

アライグマ騒動がきっかけで見つかった貴重な本

昭和3年から5年にかけ、東京の巧藝社というところから、四天王像の文様を忠実に模写集成した「浄瑠璃寺文様」という本が、カラー木版刷で出版されたそうなのですが、版元にも一切情報がなく、存在が知られながら、長らく国会図書館でしか実物を見られない貴重な本となっていました。

ところが、近年になって今回講演会場となった灌頂堂をアライグマが荒らしたことがあり、その時天井裏を調べたところ、この本の一部を欠いた初版本と全部がそろったものが偶然見つかったのだそうです。講演後実物を見せていただけましたが、木版刷りでグラデーションまで忠実に再現され、高い水準の伝統技術が投じられているように感じました。

あとでツイッターでこの本が国会図書館デジタルコレクションで見られると教えていただきました。白黒ではあるものの、たいへん丁寧に作られた本であることはわかると思います。

「昭和初期に発行された四天王の装飾文様を模写したカラー木版刷りの稀少本」は、『浄瑠璃寺文様』第1輯~第12輯(昭和3年)でしょうか?モノクロですが、国会図書館デジタルコレクションで見ることが出来ました(下記のリンクは第1輯です)https://t.co/wGVoBbP4G5— きゅうせん (@kyusen0508) 2019年6月7日


時間が押していたため、四天王の装飾美については簡単な紹介のみとして、講演は終わりました。現場に関わる人ならではの臨場感あるお話がたいへんおもしろく、聞き応えのあるご講演でした。

講演の様子。会場となった灌頂堂は江戸初期の建物で、床の間が作られるようになった桃山時代の雰囲気をまだ残している貴重な建物だそうです。天井を支える部材「竿縁」が床の間に刺さるように見える刺し天井となっており、これはまだ刺し天井が禁忌化する前に作られたものだからとのこと。

第8脇仏の底面に虫食いがあることを説明する芝野さん。

雨上がりの浄瑠璃寺は新緑がとてもきれいでした。

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