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2014年2月1日(土)伊勢への道標

  • 奈良市緑ヶ丘浄水場の敷地に伊勢への道標が立っています。

  • (2015年9月21日(月) 午後10時57分7秒 更新)
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伊勢への道標

西面に「太神宮 左 いが いせ 道」、北面に「いせ迄 凡二十七里」、南面に「安永二癸巳年三月吉日」と書かれています。

伊勢まで二十七里と書かれています

伊勢までおよそ100キロぐらいということでしょうか。こんな場所に伊勢への道標があるというのは意外ですね。ただ、後述のように、ここに書かれている「いが いせ 道」というのは、県境の道のことではないように思います。

奈良から伊勢に至る主要な街道は二つあったようです

奈良市史地理編(昭和45年)の270ページに次のように書かれていました。

奈良盆地から東方伊賀・伊勢を通り東国方面への道は、飛鳥時代からの古道として奈良盆地の東南初瀬から東方宇田を経て東進するものが多く用いられた。都が平城京に定められてからも、奈良の東方には大和高原が横たわるので、多くは高原を避け奈良から南してその南限に沿う前記の初瀬を経る道を多く用いたが、一方その北限の木津川の谷を東方伊賀に向かうものも用いられた。

また280ページには次のように書かれています。

奈良から伊賀に通ずる主道は奈良の北端奈良坂で京街道から東に分岐し、丘陵を越えて加茂に出て、笠置・大河原・島ヶ原を経て上野に達した。上野から東方加太峠を越え関で東海道に接するものと、上野から東南長野峠を越え久居を経て伊勢に向かう参詣道とに分かれた。
奈良から伊勢に至る主要な街道は二つあったようです

奈良市史地理編(昭和45年)の271ページの図。

ただ、奈良坂から笠置までは、県境になっている道を通り、当尾を越えて笠置に下る道のほかに、緑ヶ丘浄水場から梅谷に下り、高田を通って加茂に出て、そこから木津川沿いに灯明寺山北麓の峠を越え、笠置へ向かう道もあります。こちらの方が距離としてはやや遠回りですが、当尾を越えるより標高差が小さく、歩くには楽です。「丘陵を越えて加茂に出て」という奈良市史の記述とも一致します。実際、加茂町の木津川近くにある岡田鴨神社にも「左いがいせ道」と書かれた道標が建っています。また、伊能図には当尾を越える道が書かれていません。

伊能図の大和国のあたり

国土地理院が公開している「伊能大図彩色図」から、大和国のあたり。主要な街道として、般若寺から梅谷村、高田村を経て加茂へ向かう道が描かれています。加茂からは木津川の南側を東進し、「山田」を経て「木屋村」の対岸で木津川沿いに出て、少し南岸を歩いた後「南笠置村五軒屋」の渡しで北岸の「切山村」あたりへ渡ったようです。笠置山に至る前に北岸に渡ってたんですね。

ところで、明治時代の地図を見ると、奈良坂から東に向かった道が二つに分かれる場所に、この道標が建っています。斜め右に進む道は、そのまま東に向かい、中ノ川を経て当尾を越える道です。道なりに左へ進む道は、少し先で北上して梅谷へ向かいます。ということは、素直に解釈すれば、「左 いが いせ 道」というのは、梅谷から高田・加茂を経て、木津川沿いに伊賀へ向かう道、ということになりそうです。どうやら県境の道は「いが いせ 道」ではなさそうに思えます。

とは言っても、緑ヶ丘浄水場から尾根筋を登りきったところにある牛塚のそばに「伊勢参りの記念碑」がありますし、三社神社にもお陰参り記念の石灯籠があります。岩船には盛大に踊られたおかげ踊りのなごりも残っています。県境となっている道を通り、当尾を越えて笠置へ向かう道もまた、伊勢へ向かう人々に利用されたことは確かだと思います。いずれにせよ、どちらの道も伊賀にたどり着く前に、笠置で合流してしまいます。

もし県境になっている道が「いが いせ 道」でないとすると、この道は人々に何と呼ばれていたんでしょうか? 昭和18年出版の「当尾と柳生の寺々 : 浄瑠璃寺・岩船寺・円成寺 其他」には、この道を指して「笠置街道」と書かれていました(下地図)。県境になっている道は「笠置街道」なのだと思います。

笠置街道

「当尾と柳生の寺々 : 浄瑠璃寺・岩船寺・円成寺 其他」4ページに「…中川寺址、浄瑠璃寺、岩船寺は笠置街道沿ひに…」とあるので、県境になっている道が「笠置街道」なのだと思います。上地図を見ると、弥勒の辻から笠置までは尾根筋を歩かず、谷川沿いにある集落をたどるのでしょう。

五海道其外延絵図 加太越奈良道見取絵図 に見る伊賀伊勢道

後日Twitterでにゃおすけ (@yaonyaosuke2)さんに、江戸時代の伊賀伊勢道がどこをたどっていたのか、岡田鴨神社の宮司さんに聞いた話や参考になる絵図について教えていただきました。

また、東京国立博物館が公開している「五海道其外延絵図 加太越奈良道見取絵図」に、伊賀伊勢道の一部「加太越奈良道」が描かれているとのことです。

Map.

写真の位置がわかる Every Trail 版はこちら

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